Atelier 京都 / The 禅SPA Kyoto Suite
宿泊定員 5名 → 8名
何が止めていて、どう外すか
村上オーナーからの宿題(7/28 MTG「トイレ二つがあればいいんでしたっけ」)に対する、条文・許可申請書・実施図面からの見立てと、明日の現地確認リスト。
作成 2026-08-08rev.2 検証反映許可 京都市指令保医セ第425号中間ご報告 2026-08-11
結論
- 「6名以上は男女別に独立したトイレ」は、この施設には適用されません。その規定は共用便所(客室外のトイレ)の話で、京都は客室数1室・トイレは客室内で許可が下りています。客室内トイレに求められるのは室数ではなく便器の個数で、6〜10名なら2個です。
- 本当のボトルネックはトイレではなく「寝室面積」でした。京都市の規則で、旅館・ホテル営業は布団1人3.3㎡・ベッド1人4.5㎡。現況の寝室面積19.51㎡は布団運用でちょうど5名が上限で、8名には26.4㎡が必要=6.9㎡(約4.2畳)足りません。
- その6.9㎡は LDK 59.5㎡ から取れる可能性があります。LDKは寝室面積に1㎡も算入されていません。規則の寝室の定義は「客室内から浴室・便所・休憩に適さない場所を除いた残り」なので、条文上はLDKも入りうる。ここが認められるかが最大の分かれ目で、保健所への一番の質問です。
- 物理の本命は WIC(2.1㎡)の便所転用。既存トイレと壁1枚で隣接し、既存が壁面排水。配管が最短で意匠に触れません。オーナー私物の収納なので村上オーナーの同意が前提です。
rev.2 での訂正
初版で示した2点を、条例・規則の原文と申請書の実物に当たり直して
訂正しました。
- 寝室面積の単価を
布団2.5㎡/ベッド3.0㎡ → 布団3.3㎡/ベッド4.5㎡(前者は簡易宿所の数値でした。京都は旅館・ホテル営業)。8名までの不足は「0.49㎡」ではなく「6.9㎡」です
「9名の崖」がある → ありません。受付台の緩和は玄関帳場を設置する施設の規定で、京都は玄関帳場を置かず代替設備のみ(申請書の受付台欄は全て空欄)。10名でも玄関まわりの追加要件は出ません
01ボトルネックの正体
定員を縛っているルールは3本だけです。すべて京都市の「旅館業法の施行に関する要綱」第7条と、保健所配布の構造設備基準表に書かれています。京都は旅館・ホテル営業なので、簡易宿所より緩い数値が適用されます。
ルール1|便器の数(要綱 第7条 ⒀ア)
客室内に便所を設ける場合、その客室の収容定員に応じた個数以上の便器を備えること。
| 収容定員 | 必要な便器の数 | 京都の現況 |
| 1〜5人 | 1 | 充足(今ここ) |
| 6〜10人 | 2 | 1個 不足 |
| 11〜15人 | 3 | — |
誤解されていた点
「6人以上は男女別に独立したトイレ」は要綱 第7条 ⒀エで、条文は「共用便所利用者数が6人以上となるときは、男女別に共用の便所を設けること」。共用便所=客室外の便所を指します。
京都の許可申請書(第4面)の便所欄は共用0箇所・個室1箇所。共用便所が存在しないので⒀エは発動しません。適用されるのは⒀アの個数要件だけで、条文に「便所を2室」とは書かれていません。
ルール2|寝室面積(市規則 第10条)— こちらが本丸
条例第15条第1号を受けた市規則 第10条が、宿泊者1人当たりの寝室面積を定めています。営業種別で数字が違い、旅館・ホテル営業のほうが簡易宿所より厳しいのがポイントです。
| 営業種別 | ベッド(寝台) | 布団(和式寝具) |
| 旅館・ホテル営業 ← 京都はこちら | 4.5 ㎡/人 | 3.3 ㎡/人 |
| 簡易宿所営業 | 3.0 ㎡/人 | 2.5 ㎡/人 |
布団のほうが1人あたり1.2㎡少なくて済みます。同じ面積でベッドより約1.36倍の人数が入る計算で、定員を上げるならまず布団運用です。
| 寝室 | 申請上の面積(内法) | 申請上の定員 | 布団なら上限 | ベッドなら上限 |
| 寝室(1) | 13.79 ㎡ | 4名 | 4名 | 3名 |
| 寝室(2) | 5.72 ㎡ | 1名 | 1名 | 1名 |
| 合計 | 19.51 ㎡ | 5名 | 5名 | 4名 |
※ 実施図面(A-7 7階平面詳細図)の表記は 寝室(1) 15.5㎡ / 寝室(2) 7.6㎡。申請値はここから柱型等を引いた内法。
数字が合っている=読み方が正しい
現況の寝室面積で布団運用の上限を計算するとちょうど5名になり、実際の許可(5名)と一致します。この一致が、3.3㎡/人が効いていることの裏付けです。つまり今の寝室2室だけでは、寝具を増やしても6名にできません。
最大のレバー
8名に必要な寝室面積は 3.3㎡ × 8 = 26.4㎡(全員布団)。現況19.51㎡に対して不足は6.9㎡=約4.2畳です。10名なら33.0㎡で不足13.5㎡。
そしてLDK 59.5㎡ が寝室面積に1㎡も算入されていません。市規則の定義では寝室=「客室内であって、浴室、便所その他睡眠又は休憩の場所に適さない場所を除いた場所の床面積」。引き算の定義なので、条文上はLDKも残る側に入ります。床の間があり絨毯敷きで、布団を敷ける空間です。
LDKから6.9㎡(10名なら13.5㎡)を寝室面積として認めてもらえれば、面積は工事なしで解けます。逆にここが認められないと、間仕切りを新設して寝室そのものを増やすことになります。
ルール3|洗面の給水栓(要綱 第7条 ⑿ア)
| 収容定員 | 必要な給水栓 | 京都の現況 |
| 1〜5人 | 1 | 申請書上は個室1箇所・混合栓2。 現地で実数を確認 |
| 6〜10人 | 2 |
申請書の記載が正しければ、8名でも追加工事なしで充足します。明日、洗面ボウルと水栓の数を数えて確定させます。
02現在地と8名の差分
8名にしたときに動く項目を全部並べます。赤いところだけが工事・申請の対象です。
| 項目 | 基準 | 現況 | 8名で必要 | 判定 |
| 寝室面積 | 布団 3.3㎡/人 | 19.51 ㎡ | 26.40 ㎡ | +6.9㎡ |
| 便器の数 | 6〜10人=2 | 1 | 2 | 要工事 |
| 寝具 | 定員=寝具の数 | SD×2・S×2・布団1組 | 8人分 | 要追加 |
| 給水栓 | 6〜10人=2 | 2(申請書) | 2 | 要現地確認 |
| 入浴施設 | 定員に応じた規模 | 浴室13.8㎡+サウナ4.6㎡ | — | 要確認 |
| 客室床面積 | 寝台設置 9㎡以上/客室 | 92.58 ㎡ | 9 ㎡ | 充足 |
| 窓(採光) | 客室床面積の1/8以上 | 21.77 ㎡ | 11.57 ㎡ | 充足 |
| ロビー面積 | 定員30人以下=11.00㎡以上 | 12.87 ㎡ | 11.00 ㎡ | 充足 |
| 玄関まわり | 玄関帳場を置く施設のみ受付台の規定 | 玄関帳場なし(代替設備) | — | 対象外 |
10名でも玄関は増えない
初版で「収容定員9人以下の緩和があるので10名にすると受付まわりの作り直しが乗る」と書きましたが、これは誤りでした。受付台・開口の規定(要綱 第7条⑵エ・オ)は玄関帳場を設置する施設のものです。
京都の申請書では 施設内玄関帳場「無」/玄関帳場代替設備「有」(ビデオカメラ+タブレット端末)/施設外玄関帳場「無」、受付台の記入欄は全て空欄、条例第10条第2項も「該当なし」。玄関帳場そのものが無いので、この規定は最初から対象外です。
ロビーも「定員30人以下は11.00㎡以上」の固定値なので、8名でも10名でも12.87㎡で足ります。玄関側に定員の壁はありません。壁は寝室面積と便器の2つだけです。
03便器をどこに増やすか
実施図面(A-7)から、7階の間取りは 玄関・廊下5.3㎡ / トイレ2.8㎡ / WIC 2.1㎡ / 寝室(1)15.5㎡ / 寝室(2)7.6㎡ / LDK 59.5㎡ / 浴室13.8㎡ / サウナ4.6㎡ / CL 0.6㎡。候補は3つです。
本命
A|WIC(2.1㎡)を第2トイレへ
既存トイレの真隣。壁1枚を隔てるだけで、既存が壁面排水のため配管が最短。LDK・浴室・寝室の意匠に一切触れない。
- 面積
- 2.1㎡(便所として十分)
- 排水
- 既存系統に直結の見込み
- 意匠
- 影響なし
- 障壁
- オーナー私物の常時施錠収納。村上オーナーの同意が必須
次点
B|LDK 北側の一角に新設
59.5㎡あるので面積の余裕は大きい。ただし排水の横引き距離が伸びるため、圧送式(マセレーター)便器で床を上げずに解く前提。
- 面積
- 自由に取れる
- 排水
- 圧送式なら細管で長距離可
- 意匠
- 京町家風LDKに扉が1枚増える
- 障壁
- 売りの空間を削る
回避
C|7階ホール側(倉庫1.8㎡)
面積はあるが、客室外=共用便所になる可能性が高い。そうなると要綱⒀エが発動し、6名以上で男女別2室が必要になる。
- 面積
- 1.8㎡
- 排水
- 要調査
- 意匠
- 影響なし
- 障壁
- 規制が重くなる方向
直下は6階住戸のため、床スラブの貫通は原則できません。排水は床上配管か圧送式のどちらかになります。この前提はA・B共通です。
04手続きのルートと最大のリスク
変更届で済むか、許可の取り直しか
要綱 第17条2項は、新規許可が必要になる場合を「建替または全面的な改装」「増改築が延床のおおむね2分の1以上」「その他同一性を損なう変更」に限定しています。便所1つの増設と定員変更は、文言上はいずれにも当たりません。変更の届出で通る可能性が高いと読んでいます(最終判断は保健所)。
最大のリスク
工事ではなく、近隣への再説明です。
要綱 第17条1項⑴が、変更届に「条例第16条第3項に基づき説明した事項が含まれる場合、当該事項を近隣住民等に再度説明した状況を示す書類」を求めています。
そして2024年11月の近隣説明書「旅館業の計画の概要」には、「客室の数 1室/宿泊者の定員 5名」と明記されています。定員は説明済み事項です。
→ 定員変更は近隣への再説明が必要になる公算が高い。時間とリスクの主役はこちらです。保健所への事前相談で最初に潰すべき論点はここです。
手順(想定)
| # | やること | 相手 | 備考 |
| 1 | 事前相談。聞く順は ①LDKを寝室面積に算入できるか(最重要)②近隣再説明の要否 ③変更届か新規許可か ④便器2個を1室に置けるか | 京都市 保健所 | 最初にここ。①がNoなら計画の形が変わる |
| 2 | 寝室面積の再算定(LDK算入の可否) | 松田事務所 奥泉さん | 090-9709-2833 |
| 3 | 専有部の給排水変更の可否・管理規約確認 | VENZAITEN 中村さん | 080-4232-8818 |
| 4 | 便所増設の見積 | 大翔建設 橘木社長 | 基本 奥泉さん経由 |
| 5 | 消防法令適合通知書の再取得 | 京都市南消防署 | 変更届の添付書類 |
| 6 | 近隣再説明(必要な場合) | 近隣住民 | #1の回答次第。ここが山 |
| 7 | 変更届/許可申請 | 京都市 保健所 | — |
建築基準法上は既にホテル用途のため用途変更は不要。便所1室の新設は大規模の修繕・模様替に当たらず、確認申請は不要の見込み(奥泉さんに確認)。
05明日の現地チェック
ここから下は現場用です。チェックは端末に保存されるので、途中で閉じても消えません。寸法は内法(うちのり/壁の内側から内側)で測ってください。
A|WIC を第2トイレにできるか
B|排水と配管の実態
C|寝室面積を増やす側(LDK算入)
D|数えて確定させるもの
E|ついでに片付く積み残し
F|撮っておく写真
06まだ確かめていないこと
- LDKを寝室面積に算入できるか市規則の定義は「客室内から浴室・便所・休憩に適さない場所を除いた残り」という引き算なので、条文上はLDKも入ると読めます。ただし当初申請で寝室2室しか計上していないのは、定員5名に必要な16.5㎡を寝室2室で満たせたから計上する必要がなかった、という読みと、保健所が区画された寝室しか認めない運用だから、という読みの両方が成り立ちます。ここが計画全体の分岐点です。
- 近隣への再説明が必要か2024年11月の近隣説明書に定員5名が明記されている以上、必要になる可能性が高いと見ています。ただし「説明すべき事項」の条文上の範囲までは追い切れていません。所要期間とリスクがここで決まります。
- 変更届で済むか、許可の取り直しか要綱の限定列挙からの推論で、まだ裏が取れていません。「その他旅館業の施設としての同一性を損なう変更」に定員6割増が当たると判断される余地は残ります。
- 便器2個を1室に置けるか、2室に分ける必要があるか条文は「便器の数」しか書いていません。1室に2個並べる形が認められるかは運用解釈です。認められなくても、WIC転用なら元々2室になるので影響はありません。
- WICが本当に便所にできるか図面上は隣接・壁面排水ですが、間仕切りの構造・排水の取り出し位置・換気経路はすべて未確認です。明日の現地確認で埋めます。
- 8名にしたときの売上インパクト7/28のMTGでは一度も試算を出していません。許可の見通しが立った時点で、8名時のADRと稼働の見立てを別途組みます。
この資料の検証履歴
初版(2026-08-08): 要綱と保健所配布資料の一往復読みで作成。
rev.2(同日): 「敵対的検証は経ているか」の問いを受けて、条例・市規則・要綱の三段対照表と申請書の実物(チェック欄の画像確認まで)に当たり直し。7つの主張のうち2つが誤りと判明し訂正、3つが裏付け強化、2つは未検証のまま。上の一覧が残りの未検証分です。